February 20, 2010

Re:Drawing

アカデミーのドローイングクラスでは引き続きアンティークチェアのデッサンをおこなっています。

アーティストはアスリートのようなものであり、描く前はウォーミングアップをします。



今回は奥行きについて勉強しました。ドローイングを進めていく過程で、師匠より「すべてがフラットに見える」とのご指摘を受け、消しゴムでコンストラクションをもう一度組み直していきました。また、陰影のつけ方も「想像で描いているのでは」とのご指摘を受けました。



人間の先入観とは不思議なもので、無意識に作用してしまいます。例えば今回のこの絵をみていただくと、奥へ行けば行くほど、影は暗くなる、と勝手な先入観を持ってしまいがちなのですが(多くのアーティストはこのように考えている)、実際のところ、一番奥というのは光を一点に受けるため、一番明るいのです。トリックなのは、モデルが座っている部分というのは当然影ができます。なのでこの2つのことをしっかり理解して描かなければならないということです。

また、立体感は影でつけるもの、と思っている方が多いかもしれませんが、実際のところアカデミーではコンストラクション(骨組み)の部分で立体感を出します。陰影は、良いコンストラクションがあってこそ、できる次のステージの部分です。良いコンストラクションが組み立てられていない絵、所謂、デッサンがとれていない絵というのは、アカデミーでは受け入れられません。

そうして、コンストラクションを組み立てた後に、もう一度消しゴムを使って、デッサンをとります。これを「Re-Drawing」と言います。何度も何度も繰り返し、究極のデッサンに近づけます。


2007 pencil Yauko Makino

アカデミーの作品制作のポイントというのは、その絵に対してどれだけ自分が理解できるか、どこまでマニアックに取り組めるか、ということであり、速く、とか、綺麗に、とかそういうことはあまり関係ありません。

誠実な気持ちで取り組めば、結果と実力が勝手についてきますし、そのステージに来ると、食べることや寝ることを忘れるくらい没頭してしまいます。瞑想状態に入っていきます。
この意識のステージに来ると、自分に嘘がつけなくなります。この線違うんじゃないか、、、と思いながら描き直さないとうのは、犯罪に近いほど、罪悪感を感じてしまいます。

私は、イラストレーションとアカデミーアート両方の絵を描きますが、この2つは全く違う世界のものです。
アートという面では同分類されるかもしれませんが、例えるならば、食べ物という分類の中のお寿司とケーキのようなもので、それらは全く一緒にされるものではありません。
描き方、考え方、やり方は全然違います。正反対と言っても過言ではありません。
ですので、私が両方をマスターして、ファッションイラストレーションとアカデミーを融合させるアートを制作できれば、とは思っています。きっと面白いものになると思うからです。

特にアカデミーアートは、科学や物理学や数学と密接な関係にあり、非常に高度で、正当な学問と言えます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは「私のアートを真に理解できる者は数学者だけだ。」との言葉を残しています。